金村 秀一 
「育てない経営」が陥る罠
社員を育てることをあきらめると、一見順調に見える会社でも、実は大きなリスクを抱えています。現状で会社が上手く回っているとすれば、それは以下の理由が考えられます。
– たまたま優秀な社員が揃っている
– 長年同じ業務を繰り返し、経験則で仕事をこなしている
しかし、これは「人に仕事がついている」状態であり、個人の能力に依存した脆弱な組織体制です。
「ブラックボックス化」の危険性
社員教育を怠ると、特定の業務が特定の個人に固定化され、「ブラックボックス」が生まれます。これには以下のような問題があります。
– キーパーソンが離職した際の業務停滞
– 業務改善の機会が失われる
– 知識・スキルの偏在により、組織の柔軟性が低下
成長の鈍化と競争力の低下
「ブラックボックス化」した業務は、以下の理由で改善が進みにくくなります。
– 現状維持バイアス：既存の方法が最適だと思い込んでしまう
– 外部からの新しい視点や提案が入りにくい
– 業務の全体像を把握している人材が不在
結果として、時代の変化に対応できず、競争力が徐々に失われていきます。
経営者の責任と対策
このような状況を生み出しているのは、紛れもなく経営者自身です。しかし、同時にこれは経営者の決断で改善できることでもあります。特に中小企業では、経営者の意思決定が会社全体に直接的な影響を与えます。
対策として、以下のような取り組みが効果的です。
「仕事に人をつける」発想への転換
– 特定の個人に依存せず、誰でも対応できる業務体制の構築
– マニュアル化とナレッジの共有
計画的なジョブローテーション
– 複数の業務を経験させることで、社員のスキル向上と業務の透明化を図る
定期的な社内研修の実施
– 技術スキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決力の向上を目指す
メンター制度の導入
– 経験豊富な社員が若手を指導する仕組みを作り、知識・スキルの伝承を促進
外部研修への参加奨励
– 新しい知識や視点を取り入れ、社内に還元する機会を設ける
社員教育は大切な未来投資
社員教育は単なるコストではなく、企業の未来への投資です。短期的には時間と労力がかかりますが、長期的には以下のようなメリットがあります。
– 業務効率の向上
– イノベーションの促進
– 社員のモチベーション向上と定着率の改善
– 柔軟で強靭な組織体制の構築
まとめ：持続可能な成長のために
変化の激しい現代のビジネス環境において、社員教育は中小企業の持続的成長に不可欠です。「人に仕事をつけるのではなく、仕事に人をつける」という発想の転換が、組織の柔軟性と競争力を高めます。
今一度自社の社員教育体制を見直してみてはいかがでしょうか。それが、御社の10年後、20年後の姿を決定づける重要な一歩となるはずです。
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