金村 秀一 
なぜ「真似」が有効なのか
多くの社長は、経営が困難な状況に直面すると、独自の解決策を模索しがちです。しかし、経験したことのない成功への道筋を、自力で見出すのは至難の業です。なぜなら、私たちの思考は過去の経験に基づいているからです。
例えば、赤字が続いている会社の社長が、突然黒字化の妙案を思いつくことは稀です。なぜでしょうか。それは単純に、黒字経営の経験がないからです。同様に、離職率の高い会社の経営者が、従業員の定着率を上げる革新的な方法を考え出すのも難しいでしょう。
ここで重要なのは、「考える」という行為の本質です。考えるとは、過去の経験やデータを頭の中から引き出す作業に他なりません。つまり、経験していないことは、いくら頭をひねっても思いつかないのです。この認識は、経営改善を目指す上で非常に重要です。
成功企業の「真似」から始める
では、どうすれば良いのでしょうか。答えは明確です。すでに成功を収めている企業の方法を学び、それを自社に適用することです。これが「真似」の本質であり、経営改善への最短路となります。
具体的には、
1. 黒字化を目指すなら、同業他社で黒字を達成している企業の経営手法を研究する
– 財務管理の方法、コスト削減策、売上増加の戦略などを詳しく調査
2. 従業員の定着率を上げたいなら、高い定着率を誇る企業の人事施策を参考にする
– 給与体系、福利厚生、キャリア開発プログラムなどを分析
3. 非常時にも揺るがない組織づくりを目指すなら、そのような強靭な組織を持つ企業の危機管理体制を学ぶ
– リスク管理策、緊急時の意思決定プロセス、従業員教育などを参考に
重要なのは、単なる表面的な模倣ではなく、成功企業の根本的な考え方や仕組みを理解し、自社の状況に合わせて適用することです。
「真似」を実践する上での具体的なステップ
目標設定
まず、自社の課題を明確にし、具体的な改善目標を設定します。
例：「1年以内に営業利益率を5%向上させる」「2年以内に従業員の離職率を半減させる」
ベンチマーク企業の選定
自社と似た規模や業種で、目標を達成している企業を探します。
– 業界団体や商工会議所のデータを活用
– 業界誌やビジネス雑誌で紹介されている成功事例を研究
情報収集
選定した企業の成功要因を徹底的に調査します。
– 可能であれば、直接訪問や経営者との面談を実施
– セミナーや講演会への参加
– 公開されている財務情報や企業報告書の分析
段階的な導入
一度に全てを変えようとせず、優先順位をつけて段階的に実践します。
– まず小規模なテストから始め、効果を確認
– 成功した施策は、徐々に規模を拡大
継続的な学習と改善
一度の成功に満足せず、常に新しい「真似」の対象を探し続けます。
– 業界動向や最新の経営トレンドにアンテナを張る
– 成功事例だけでなく、失敗事例からも学ぶ姿勢を持つ
まとめ
経営改善の道のりは決して易しくありません。しかし、成功企業の事例から学び、それを自社に適用していくことで、確実に前進することができます。「真似」は決して恥ずべきことではなく、むしろ賢明な経営判断の一つです。成功への第一歩は、今日から始めることができます。勇気を持って、成功企業に学ぶ姿勢を持ち続けてください。そして、いつの日か皆様の会社が、他社の「真似」の対象となる日が来ることを楽しみにしています。
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