組織力を高める人材採用術:中小企業経営者が知るべき3つの秘訣

金村

組織を強くするために必要なことは、そこそこの能力を持った社員が、同じ価値観を持つことです。そのため「既存社員よりも優秀な新卒社員は必要ない」と私は考えています。

優秀な社員を採用しない3つの理由

中小企業の経営において、人材の採用戦略はとても重要な課題です。特に、新卒採用の際には「既存社員よりも優秀な人材を採用すべきか」という疑問に直面することがあります。しかし、経営の観点からすると、必ずしも「最優秀」の人材を採用することが最善の選択とは限りません。

私たちの会社で実践している「既存社員よりも優秀な新卒社員を採用しない」理由を3つご紹介します。

既存社員も新卒社員もやる気をなくすから

組織内で極端な能力差が生じると、既存社員と新入社員の双方にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。例えば、軽自動車とスポーツカーを同じ速度で走らせるようなものです。軽自動車側は「もうついていけない」と諦め、スポーツカー側は「もっと速く走りたい」とストレスを感じてしまいます。

組織においても同様で、極端な能力差は双方の意欲を削ぐ結果となりかねません。したがって、「優秀すぎない」「既存社員とのレベル差が少ない」人材を採用して、能力の出ない、全員が実力を発揮できる環境づくりが重要です。

組織には、さまざまな人材が必要だから

優れた組織は、城壁のように様々な「石」で構成されています。大小様々な石が互いに補完し合うことで、強固な壁となるのです。同様に、企業組織においても、多様な個性や特性を持つ人材が必要不可欠です。そして、さまざまな個性や特性を持つ社員をひとつにまとめているのが、「価値観」です。

ここで重要なのは、「能力」や「学歴」だけでなく、個々の特性や役割の多様性です。野球チームを例に取ると、すべてのポジションに強打者を置くよりも、守備や走塁に長けた選手を適材適所に配置する方が、チーム全体としての戦力は高まります。

組織力を高めるためには、総合力で勝負すること。異なる役割を持った人たちが、全体の目標を共有し補完し合う「有機的なつながり」をつくることです。

組織の一貫性がなくなるから

顧客満足度を高めるためには、どの社員が対応しても同質のサービスを提供できる体制が重要です。これは、いわゆる「金太郎飴」のように均整のとれた組織をつくることが大切です。

お客様にとって大切なことは、「人が入れ替わっても、誰が担当しても、同じ質の仕事ができること」「誰に聞いても、同じ答えが返ってくること」です。このような理由から、突出した能力を持つ社員がいると、かえってこの一貫性が損なわれる可能性があります。

中小企業にとって重要なのは、個々の能力の高さよりも、全員が一定水準以上の結果を出せることです。いくら能力が高くても、会社の考え方に従えない人は、結果として戦力になりません。価値観が揃っていなければ、組織がバラバラになるからです。

同じ価値観のもとで仕事をすることで、社員全員が同じ方向を向いて戦えるようになります。たとえ個々の能力に多少の差があっても、価値観が揃っていれば、組織力で大きな成果を上げることができるのです。

中小企業の採用戦略

このような理由から、中小企業の採用戦略では優秀な人材ばかりを追い求めることは望ましくありません。それよりも、社内にいる全社員の価値観が統一されていること。これさえ実現できていれば、新しく入社してきた社員も、価値観が合えば残り、価値観が合わなければ去ることになります。

社員数の少ない中小企業は、社員ひとりひとりのパフォーマンスが経営に与える影響が大きくなります。そのためにも、現在持っている能力よりも、未来に覚醒する能力を培うことができる文化と環境を整えることが長期的視点から重要になってくると考えています。


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